その10 ~後進のために~

 デザイン業界はMacintoshから始まるDTP環境誕生で大きく変化しました。誰でもパソコンとIllustratorとPhotoshopが操作できれば印刷物を簡単に作れるようになり、障壁が下がったことで本来、デザイナーが担う仕事は減りました。そして、印刷屋さんが自社内部でデザイナーを雇い、デザイン業界に参入してきたことも影響を及ぼしていると思います。業界自体のカタチが変わったことで価格競争も起こります。そんな歴史を見てきたデザイナーだから伝えることがあるかもと思い、若いデザイナーさんに知って欲しくて歴史を綴りました。世の中には「生きるために仕事をする人」「好きなことを仕事にしている人」しかいないと思います。どちらを選ぶかはデザイナーなら後者でありたいと思いませんか?

実はデザイナーの仕事は増えたんです

 アナログ時代を知らない人にとっては、今が当たり前だと思っているかもしれません。違います、実は今のグラフィックデザイナーは「デザイン~印刷のためのデータ仕上げ」まで担当しているのです。アナログの時代はレイアウト~写植依頼~版下仕上げ~色指定までが仕事、その後は外注となる製版~印刷~色校正とうい工程でプロからプロにつながる一連の流れがありました。

 また、都会のデザインの仕事はアートディレクター、グラフィックデザイナー、コピーライター、フォトグラファー、イラストレータなど多くの人が携わって一つのデザインを仕上げていきますが、豊橋のような田舎では分業なんて夢のまた夢。すべて一人でこなす、こなすようになった方が強いと言えます。

印刷機までの仕事をデザイナーがやる時代

 上記の工程をひとりのグラフィックデザイナーがワンストップで行うようなった訳ですから、仕事が増えているということになります。ただ、自分のペースで仕上げることができることで待ち時間がない分、デザインの時間は増えたという事実も忘れてはいけません。

だからこそスキルアップ

 例えば、Photoshopで行う写真補正、写真加工一つとっても奥が深いのです。紙質や印刷屋さんの傾向を知り、どうすればベストの状態で印刷があがるかを見極める目が必要になります。これはさんたの経験値としてお伝えすることですが、多くの印刷は「青(シアン)」が強くなる傾向があります。写真をキレイに出す簡単なコツは、明るめに補正した後「青(シアン)」を少し抑え気味に補正、相対する「黄(イエロー)」の濃度を若干あげる。どちらかというと黄色が映えるぐらいの設定の画像は印刷した場合キレイに出います。
 アイスタイルデザインのサイトの中にも「デジタル画像加工と補正」というページがあるので参考にしてくださいね。

後進のため

 自分が生きていくために働いていることに嘘はありません。
 しかし、アイスタイルデザインが価格競争に巻き込まれないようにしているの本当の理由は別にあります。正直、デザインは頭の中で生まれた発想とアイデアでできた実質的な費用の掛からないものです。しかし、パッと、すぐにまとまることもありますが、職場を離れても、パソコンを離れても考えて、夜中に目が覚めた時も何かヒントになるものを探していることもありますし、どんなに考えても出ないこともあります。その産みの苦しみはデザイナーでなければ分からないもの(それが楽しいのですが…)です。その価値やその見えない努力はそれなりの価値と対価として評価されなければいけないと思います。

 だからこそ、アイスタイルデザインのさんたを含めて、今のデザイナーさんが本来のデザイン料を守り、デザイン料が下がらないように価値や対価を守っていかないといけない、この先の未来に新しくデザインを志す若いデザイナーさんが生きていけるようにすべきだと思うのです。もっと安心して働けるデザイン業界、なりたい職業であるべきだと思うのです。そのためにグラッフィクデザイナーとして、できる限りのスキルアップと情熱を持って仕事に取り組むべきだと思うのです。


さんたからの助言
 友だち価格、特別割引、ましてや無料など…自分の価値を結果として下げることになります。可能な限り自分で決めた価格設定を守る努力をしてください。下等な価格競争に参入しないで欲しいのです、薄利多売、自分のセンスや今まで習得してきた技術を簡単に値下げせず、クライアントさまの気持ちに寄り添い、期待値以上の仕事で応えてください。

←前に戻る ● 目次に戻る→